昨猟期(平成25年度)も各地で狩猟中での事故が発生しました。猪猟、鹿猟等大物猟での誤射による発砲による重傷事故、死亡事故が又々起きてしまいました。
加害者、被害者共に人生が一変してしまい、家族にも想像つかぬ程の苦しみをもたらしています。狩猟中における銃砲による事故の撲滅はいかにすれば成すことができるのでしょうか。
1 狩猟事故の原因とその対策
ここ数年の猟野での事故は.暴発、矢先の不確認、誤認発射の順で発生しています。
①暴発:暴発事故は常に獲物に対して発砲できるように実包が装填してあり、引金 に指を入れて行動している事が大きな要因です。射撃場でのルール、マナーを猟場に活用し、獲物の獲りあせりをしない事が肝要です。
②矢先の不確認:前後左右、周囲に対しての注意がなく、獲物が出れば背景を意識すること無く発砲することが原因です。落ち着いて発砲することが肝要であり、また、使用する実包の最大到達距離を知っておくことも必要です。特別な実包(主に大型獣類用)は別として、鳥用の散弾実包ならば300mは到達するものだと理解します。この300mの距離感をどうつかむか。学生時代の100m走の経験から皆さん100mの距離感はお持ちだと思います。単純にこの2倍で200m、3倍で300mとなるわけです。300mの距離予想を繰り返し行い、レンジファインダーで確認してみます。最初は目測と実測はかなり違い、市街地と猟野での距離感はまた異なるというものの、繰り返し行うことで距離感は養われます。自動車を運転している時には信号待ちで、散歩のときにも距離を視る習慣をつけることが距離感をつかむ最大の秘訣です。
③誤認発射:大物猟での事故に多く見受けられます。笹藪が動いたので猪だと思って発砲し、人を撃ってしまったという事故です。人が獲物に見えてしまう原因は注意力不足というはなしだけでは終わらず、獲りあせりからくる視覚上の問題を探る必要があります。
2 射撃場で学ぶ安全狩猟
警視庁の調査では、猟野での事故の加害者は狩猟での経験年数が20年以上のベテランに多く、また、射撃場での練習は年に一度も練習しない、または1回程度との事です。つまり、熟練者故の年齢からくる体力、注意力の衰え、そして射撃の練習不足、取扱注意不足によることが事故の要因となっています。
普段からの体力作りはもちろんのこと、出猟前夜は出来るだけ睡眠をとり、体調が良い状態で猟野に立ちたいものです。そして、非猟期中には数多く射撃場に通い、射撃練習を行うことも必要です。銃砲の操作に慣れ、慌てる事なく余裕をもって標的に対して向き合い、射撃をすることが肝要です。
猟友会で盛んなフィールド射撃でのルール・マナーは銃砲の操作を向上させ、猟場で大いに役立ちます。
①銃口は人のいる方向には絶対に向けてはいけない。
②用心金には発射直前まで指を入れてはいけない。
③必ず脱砲を確認すること。(特に自動銃の場合は要注意)
3 安全狩猟に向けて
狩猟は獲物を捕獲することが目的ですが、単にその目的達成のため熱心になればなるほど、それは獲りあせりとなり、狩猟事故を招きます。獲物を欲しがるなとは申しませんが、そこまで欲しい理由は何なんだろうと自問してみて下さい。「獲物と出会いましたが、安全に自信が無かったので撃ちませんでした。」ということばに、狩猟者が称賛を送ることが普通になった時、狩猟事故は限りなくゼロに近づきましょう。