狩猟用の銃砲の変遷  その2 ~当時のカタログ・資料より~

9-3〇火縄銃のゆくえ ~狩猟に使っていたのか?~

明治以降、世の中の仕組みが一変した点には触れましたが、「新銃(国産)」ましてや「輸入銃」などは、おいそれと買えるものではなかったかと思います。先ほどまでご説明したように、明治の中頃はともかく、本当のところはどうだったのでしょうか?

この件についても、なかなか資料不足で、これという結論には至りませんでした。ただ、いくつかの材料をもとに「推論」を述べてみたいと思います。

明治時代に入り、広く狩猟が行われたようですが、その全てが新たに買った「新銃」という事はありえないと思います。火縄銃のゆくえについて、直接の答えにはなっていないのですが、今回いろいろ探した資料に、千葉徳爾先生(民俗学者、故人、柳田国男門下)の著書【狩猟伝承】がありました。その一節をご紹介しますと、

『・・・(略)火縄銃が、火縄のいらない雷管を撃針で打って発火させる「管打ち」に変わったのはいつごろであるのか。はっきりしたことはわからないが、私の会った九州方面の明治十年~二十年代に生まれた狩人は、大半が管打ち銃を射撃した経験者であった。

したがって、明治の末頃まで山間にはこの種の銃が用いられたらしい。・・・ 』

(資料⑬、P75~77)

というような記載がありました。

ここで千葉先生の著書にある「管打銃」とは、私が思うには、火縄銃(改造後)の可能性はあるものの、そう多くないと思っています。その理由としては、ある資料においては、『従来の火縄銃を管打ち銃に改造して用いたものも多かったようだ』ともあるのですが(資料⑩、P20)、別の資料は『・・明治14年の新聞に、種子島銃を作る職人たちが、仕事がなくなって困窮している。そこで村田銃の量産のため東京に呼んだ・・』との記載があります(資料⑭、P17)。

ここでいう「職人」が鉄砲鍛冶そのものかどうかは不明ですが、先の言及部分「火縄銃⇒管打ち銃」への改造がかなりあったなら、そこそこ仕事は継続しそうな気がします。でも「困窮するほど」との状況ですと、火縄銃⇒管打ち銃へのコンバージョンは、そう多くはなく、むしろ「払い下げの銃=軍用銃」が出回ったので買い求めた、または自らが「払い下げ銃」を安価に入手して改造してもらった、等々が実際ではなかったか?と推測している次第です。当然、それらが入手できない明治初期は、火縄銃での狩猟も継続した、と

推測し、その後も細々と続いていたとみています。

何度も登場していただき恐縮ですが、かの千葉先生の著書から、引用・抜粋させていただきます。

(資料⑬より、P77の表を、抜粋・転載)

< 長野県内 民有銃砲一覧表、明治17年12月、長野県統計 >

           軍用銃(小銃?)        猟銃(散弾銃?)
  洋式 和式 洋式 和式
下伊那 393 158 18 3254
上伊那 58 99 1699
諏 訪 359 64 41 1021
東筑摩 217 274 1744
小 県 451 339 2454
更 級 360 268 700
埴 科 655 202 671
北佐久 233 204 1713
他8郡 616 568 4530

 

(カッコ内は筆者補足)

残念ながら千葉先生は、数字の振り分けの定義というか、「何が和式の軍用銃か?」「何が和式の猟銃か?」等の注釈をおつけしておりません。

私が思うには、ライフルの有無、で「軍用銃」かどうか、その他は「猟銃」という定義ではないか、と解釈しました。また、「和式猟銃」がこれほど多いのは、ひとつには火縄銃を含んでいるためなのと、またそれと同数以上に「改造猟銃」(前装、後装とも)が、

数として上がっているのではないかと思いますが、詳細のところは不明です。

また、もう一つ肝心な事は、「民間所有」の範囲がどこまでなのか、も大事な点です。

本統計表は明治17年ですが、すでにこの時「十三年式村田銃」が採用され、それ以外の小銃で、戊辰戦争に使用された銃砲は、順次払い下げが始まったとみられます(広い意味で、これらの改造銃も「村田式猟銃」という呼称をされているようです →出典4他)

この時点で、今まで使用した火縄銃が「猟銃」に置き変わりだした頃、ではないかと推測します。

また「十三年式~」も、明治30年頃になって、有名な「村田式猟銃」となって払い下げが始まり、日本の津々浦々へ供給されて行った、とみられています。

もし機会があれば、明治初期の頃のカタログを入手して、私の「推測」の部分を確認してご報告してみたいと思います。
 

〇参考文献ならびに資料、HP掲載等出典  

①仮図入 銃砲火薬猟具類定価表

小樽佐々木銃砲店 発行、明治30年(1897)6月

②猟銃猟具定価表

川口銃砲店 発行、明治30年前後(推定)

③銃砲猟具雛形図解 営業案内(下)

 日本銃砲店 発行、大正元年(1912)10月

④銃砲猟具雛形図解 営業案内(上)

 日本銃砲店 発行、大正3年(1914)9月

⑤大正3年改正 営業案内

大倉組銃砲店 発行、大正3年(1914)

⑥銃猟界臨時増刊「射撃始」

 金丸銃砲店 発行、明治39年(1906)1月

⑦銃猟新書

 十文字信介 著、金港堂 刊、明治24年(1891)、

 ⇒ <近代日本狩猟図書館>第2巻(大日本猟友会 発行)、収載より

⑧銃猟新書 続篇

 十文字信介 著、金港堂 刊、明治25年(1892)、

 ⇒ <近代日本狩猟図書館>第2巻(大日本猟友会 発行)、収載より

⑨最新 銃猟研究

 鈴木俊行 著、三徳社 刊、大正11年(1922)

⑩日本狩猟史

 水越隆平 編著、日本狩猟史刊行会 刊、昭和32年(1957)

⑪ガン・ハンドブック

 小川菊松 編集、狩猟界社 発行、昭和37年(1962)4月

⑫(増補)図解古銃事典

 所 荘吉 著、雄山閣出版 刊、昭和49年(1974)、第3版発行

⑬狩猟伝承 ~ものと人間の文化史14~

 千葉徳爾 著、財団法人 法政大学出版局 刊、昭和50年(1975)初版発行

⑭反射炉 Ⅰ大砲をめぐる社会史 ~ものと人間の文化史77-Ⅰ~

 金子 功 著、財団法人 法政大学出版局 刊、平成7年(1995)初版発行

⑮小銃 拳銃 機関銃入門

 佐山二郎 著、光人社 刊、平成12年(2000)初版発行

⑯ミリタリー・スナイパー

 MARTIN PEGLER 著、岡崎淳子 訳、大日本絵画 刊、平成18年(2006)

初版発行

⑰企画展示「歴史のなかの鉄炮伝来 ~種子島から戊辰戦争まで~」解説図録

 国立歴史民俗博物館 編集、(財)歴史民俗博物館振興会ほか 共同発行、

 平成19年(2007)、第2版

⑱鉄砲伝来の日本史 ~火縄銃からライフル銃まで~

 宇田川武久 編、吉川弘文館 刊、平成19年(2007)初版発行

⑲鉄砲を手放さなかった百姓たち

 武井弘一 著、朝日新聞出版 刊、平成22年(2010)

⑳MAUSER RIFLES

 LUDWIG OLSON 著、NRA BOOK SERVICE 発行、1985年(昭和60)

㉑THE SNIDER―ENFIELD RIFLE

 CHARLES J. PURDON 著、MUSEUM RESTORATION SERVICE 発行、

1990年(平成2)

㉒FLAYDERMAN’S GUIDE 9th EDITION

 GUN DIGESTBOOKS 発行、2007年(平成19)

㉓THE PATTERN 1853 ENFIELD RIFLE

 PETER SMITHURST 著、OSPREY PUBLISHING 発行、

2011年(平成23)

㉔PICTORIAL HISTORY OF THE RIFLE

 G.W.P. SWENSON 著、IAN ALLAN 発行、1971(昭和46)、第1版

 

1Retire「幹さん」のH/P より~銃砲・火薬の歴史~

 http://www.cc.rim.or.jp/~matu~milk/gyoukairekisi(2).hylm

2野生生物に関する制度等の概略史(1870-2000)

 http://www.biodic.go.jp/cbd/5/tu1-2.PDF

3きのこたけ戦争資料館 ~別館HP~より

 http://www35.atpages.jp/tokorozawa/faq11mr02d.html#20885

4モーターワークスカンパニー おすすめリンク~社長の道楽~より(MWCホールディングHP内 )

 http://www.piyoyonet.com/douraku/shoot/mukasibabanasi.html

5日本の武器兵器 ~須川薫雄氏主宰HP~より

 http://www..日本の武器兵器.jp/archive

6日本銃砲史学会 HPより

 http://www.fhaj.jp/

7大日本猟友会 HPより

 http://www.moriniikou.jp/

8無可動実銃販売元 株式会社シカゴレジメンタルス HPより

 http://www.regimentals.jp/

9徳川家康の東金鶴御成および明治時代の雄蛇ヶ池猟区考察

 ~吉田義明氏主宰HP、「レイクチャンプ」より ~

 http://wakasagi.jpn.org/js-news06-189210.htm

10明治初期の熊本南部における野生哺乳類の生息、狩猟および被害の分布

 ~「森林防疫 Vol.59、No.2(No.677)、2010 3月号」~ より

 http://cse.ffpri.affrc.go.jp/myasuda/pdf/Yasuda2010b.pdf

11北陸地方における鳥猟文化の変遷に関する研究

 ~2007年度 日本海学研究グループ支援事業 研究成果発表会~ より

 http://www.nihonkaigaku.org/library/group/i070401-t5.pdf

12開拓使期における狩猟行政 ~北海道鹿猟規則制定過程と狩猟制限の論理~

 北海道大学付属図書館 データベースより

 http://src-hokudai-ac.jp/inoue/north_eurasian/momose.pdf

13株式会社 三田商店 HPより ~会社案内110年のあゆみ~

 http://www.mita-gnet.co.jp/enkaku/enkaku_meiji.html

14ドイツ・マウザー社 HPより

 http://www.mauser.com/Home.home.0.html?&L=1

15日本と世界のお金の歴史 雑学コラム

 http://manabow.com/zatsugaku/column06/

 http://manabow.com/zatsugaku/column06/2.html

16教えて!goo 検索サイト「明治5年の1円は?」

 http://oshiete.goo.ne.jp/qa/7138577.html

17YAHOO!Japan 知恵袋 検索サイト「大正時代の1円は?」

 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1160038581

18東京都小平市公式HP ~村の鉄砲のゆくえ~

 http://www.city.kodaira.tokyo.jp/kurashi/031/031806.html

19YAHOO!Japan 知恵袋 検索サイト「火縄銃で狩猟に使ったのでしょうか?散弾は

 使えたのでしょうか?」

 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1462618589

 

〇 資料ならびに、取材・執筆にご協力いただいた、関係各位

・有限会社 浜田銃砲店

 (東京都千代田区外神田5丁目2-2)

・一般社団法人 大日本猟友会

 (東京都千代田区九段北3丁目2-11)

 

                         あらためて御礼申し上げます。

 

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